特定保健指導 約18分

動機づけ支援と積極的支援の違い|第4期の目標・必須工程・アウトカム・費用を比較

特定保健指導の動機づけ支援と積極的支援の違いを整理。誰がどちらになるか、目標・必須の支援内容・アウトカム評価・180ポイント・費用・院内工数を表で比較。第4期制度を院長・事務・保健師向けに解説します。

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第1章:制度を理解する(1〜4) (4/4)

全12記事中 4番目

「動機づけ支援と積極的支援、結局何が違うの?」——受付・保健師・院長の三者で答えが揃っていないクリニックは少なくありません。

本記事は 2つの支援区分を並べて比較 するための記事です。階層化の判定は 特定保健指導の対象、180ポイントの細目は 特定保健指導の内容、単価は 特定保健指導の費用 をあわせて読んでください。公式の骨格は 手引き 第4.3版厚労省Q&A です。

30秒でわかる違い

観点動機づけ支援積極的支援
対象イメージリスクはあるが比較的軽い層肥満+複数リスクなど より重い層
制度上のゴール行動計画を立て、本人の実行を促す生活習慣を実際に変える(数値・行動で評価)
継続支援本人主体。全国一律の接触回数規定なし3か月以上 の継続的支援が必須
アウトカム180p方式は 原則使わない180ポイント以上 で修了(アウトカム+プロセス)
代表アウトカム3か月後の 行動計画の実施評価腹囲2cm+体重2kg減 等(最大180p)
初回面談20分以上(個別)20分以上(個別)
終了条件初回+ 3か月以上後 の実績評価初回+継続+ 3か月以上後 の実績評価(180p以上)
契約単価(目安)低い(例:9,000〜11,000円/件)高い(例:25,000〜27,500円/件)
院内工数比較的短い面談・フォロー・記録が重い

覚え方 — 動機づけは「動機と計画」、積極的は「伴走して成果を数字で取る」。

なぜ2種類に分かれるのか

特定保健指導は、健診で見つかった生活習慣病リスクに応じて 支援の強度を変える 制度です。

  • 情報提供 … 啓発・結果説明が中心(郵送・電子が多い)
  • 動機づけ支援 … 本人の行動変容 意欲 を高め、実行可能な計画を立てる
  • 積極的支援 … より高いリスク層に 継続的・集中的 に介入し、アウトカム(成果) を評価する

第4期(2024年度〜)では、積極的支援の評価が第3期の「支援A/B・時間ベース」から 180ポイント制(成果+プロセス) に刷新されました。動機づけ支援は ポイント方式の対象外 です。

誰がどちらになるか(再掲)

詳細は 特定保健指導の対象 ですが、現場で迷いやすい点だけ整理します。

ポイント内容
判定の軸腹囲・BMI、血糖・脂質・血圧リスクの 個数、喫煙の有無
40〜64歳リスクが重いほど 積極的支援 になりやすい
65〜74歳同じ数値でも 原則動機づけ支援(年齢特例)
服薬中糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療薬服用者は 原則対象外
正とするデータ保険者の 利用券・対象者情報(院内Excelは二重チェック用)

「健診結果が悪い=積極的支援」とは限りません。支援区分は健診XMLの階層化結果と利用券が一致 しているかが請求の前提です。

目標(ゴール)の違い

動機づけ支援の目標

制度設計上のねらいは 「本人が自ら生活習慣を改善しようとする動機づけを高め、実行可能な行動計画を設定・実践させること」 です(手引きの趣旨)。

クリニックが患者と合意する目標の典型例:

  • 週3回、食後20分歩く
  • 甘い飲料を平日だけ水に替える
  • 就寝前の間食をやめる

数値目標(2cm・2kg)を必達とする制度ではありません。 ただし初回・評価時に体重・腹囲を 指導者が測定 し、行動計画の達成度を 3か月後に評価 します。

積極的支援の目標

「生活習慣を実際に改善させること」 がより強く求められます。第4期は アウトカム(成果)評価 が中心です。

代表例:

  • 腹囲 2.0cm以上 かつ体重 2.0kg以上 減少 → 180ポイント(これだけで修了ライン)
  • 2cm・2kg未達でも、1cm・1kg減、食事・運動・禁煙等の 行動変容継続支援(プロセス) を組み合わせて180p以上

「2cm・2kg=必須合格点」ではなく「180pの最短ルート」 と理解すると運用しやすいです。

目標の型動機づけ支援積極的支援
行動目標本人が 実行可能 な1〜2個を設定同左+ 180p計画 を支援計画書に記載
数値目標参考(必達制度値なし)2cm・2kg が最大評価。未達時は段階評価+プロセス
禁煙計画に含めうる禁煙達成で 30p(アウトカム)
修了の考え方行動計画の 実施評価を完了180p以上 + 3か月以上経過後の実績評価

やらなければならないこと(工程別)

共通(両区分)

工程必須内容
資格確認初回・継続・評価の 都度(マイナ保険証等)
利用券確認支援区分・整理番号・有効期限・負担額
初回個別面談20分以上。健診結果説明・課題把握・行動計画
初回集団面談実施する場合は原則 8人以下・おおむね80分
測定体重・腹囲(指導者による客観的測定が基本)
実績評価初回面接から 3か月以上経過後
記録・XML支援内容・日時・手段・双方向性の証跡

動機づけ支援で「やること・やらなくてよいこと」

項目動機づけ支援
初回後〜評価まで本人による実践 が中心。定期フォローの 全国一律回数はない
継続支援(電話・ICT等)契約・院内基準で実施してよいが、 180pのための必須回数ではない
支援計画書行動計画の内容・評価予定日を明確に
3か月後評価行動計画の実施状況 を評価(達成・部分達成・未達と理由)
180ポイント集計原則しない(積極的支援用の制度)
早期実施加算健診当日・1週間以内初回の ポイント加算は積極的支援向け の整理が一般的

現場のイメージ:「初回で計画 → 3か月後に振り返り」 が骨格。中間フォローは品質・脱落防止のために行うクリニックが多いですが、制度上は積極的支援ほど 継続介入量 は求められません。

積極的支援で「やらなければならないこと」

項目積極的支援
支援計画書180ポイント 達成計画(アウトカム+プロセス)を記載
継続支援初回から 3か月以上 継続(個別・電話・メール・グループ等)
プロセス例個別10分以上70p/電話5分以上30p/メール双方向1往復30p 等
3か月後評価体重・腹囲再測定+ 合計180p以上 か確認
早期実施健診当日20p・1週間以内10p(積極的支援のプロセス/早期加算)
脱落管理音信不通時の 催促ログ(契約どおり3回以上等)

「初回20分だけで終了」は どちらの区分でも不可 です。積極的支援は特に 継続支援の証跡 が請求・返戻の焦点になります(→ 請求と脱落)。

アウトカム(Outcome)の違い — ここが最大の分岐

動機づけ支援のアウトカム

180ポイント表は適用しません。 評価の軸は 行動計画 です。

  • 初回に設定した行動(例:週3回歩行)を、3か月間どの程度実行できたか
  • 体重・腹囲は 参考指標 として記録(自己申告のみの完了扱いは不適切)
  • 評価結果は「達成/一部達成/未達」等を 記録に残す

「2cm減らなかったから動機づけ支援は失敗」という制度設計 ではありません

積極的支援のアウトカム(180ポイント)

実績評価時点で 合計180ポイント以上 が修了の目安です。

アウトカム評価(成果)

評価項目ポイント
腹囲2.0cm以上 かつ 体重2.0kg以上減180
腹囲1.0cm以上 かつ 体重1.0kg以上減20
食習慣の改善(2か月以上継続)20
運動習慣の改善(2か月以上継続)20
喫煙習慣の改善(禁煙)30
休養習慣の改善20
その他の生活習慣の改善20

プロセス評価(支援の実施)

介入ポイント
個別支援(ICT含む)10分以上/回70
グループ支援40分以上/回70
電話支援5分以上/回30
電子メール等 双方向1往復30

注意点(現場で起きやすい誤解):

  • 2cm・2kgを初回直後に達成しても、3か月未満では180p修了にならない(評価時期の規定)
  • 2cm・2kg未達でも、1cm・1kg+行動変容+電話・ICT で180pを構成するのが第4期の設計
  • メールは 返信のある双方向 のみ。一方向配信をプロセス1回分とみなすのは 不正請求事例

費用・請求・工数の違い

委託単価(クリニックへの入金)

全国一律ではありません。参考例:

出典(例)動機づけ支援積極的支援倍率イメージ
熊本市国保(令和8年度)11,000円25,666円約2.3倍
協会けんぽ兵庫支部(2026年度上限)9,290円27,500円約3.0倍

→ 詳細は 特定保健指導の費用

分割請求(熊本市国保の例)

区分契約単価初回面接後実績評価後
動機づけ支援11,000円8割(8,800円)2割(2,200円)
積極的支援25,666円4割(10,266円)6割(15,400円)

積極的支援は 後半(継続+評価)の比重が大きい ため、脱落・音信不通で 後半分が取りこぼしやすい 構造です。

患者の窓口負担

区分によって異なるわけではなく、保険者・契約 次第です。0円の契約もあれば、被扶養者の積極的支援のみ定額負担がある例もあります。

院内工数(目安)

作業動機づけ支援積極的支援
初回面談20〜30分20〜30分(計画書・180p設計含む)
継続フォロー任意〜軽め複数回(電話・ICT・対面)
3か月後評価10〜20分10〜20分(再測定・ポイント確定)
事務・XML(証跡・分割請求・催促ログ)
1件あたり総工数おおむね 1〜2時間3〜5時間以上 になりやすい

採算試算は 特定保健指導の採算 を参照してください。

現場で起きる混同パターン

混同何が問題か対策
積極的支援なのに180pを取らない後半請求・修了判定ができず返戻支援計画書に180p計画を必ず記載
動機づけなのに毎週ICTで180p相当区分と実態の不一致利用券区分どおりに記録・請求
2cm・2kgだけ見て初回で終了3か月・継続要件未達初回=開始。評価は3か月後
65歳以上を積極的支援で請求階層化誤り年齢特例をXML・券で再確認
初回のみ実施して8割請求分割請求の前半だけ契約上の完了条件を満たすまで請求タイミングを管理

院内チェックリスト(初回面談時)

#確認項目動機づけ積極的
1利用券の支援区分
2資格確認(当日)
3初回20分以上
4行動計画を文書化
53か月後評価の予約
6180p計画書を作成
7継続支援スケジュール任意
8体重・腹囲を指導者測定

情報提供との関係(3段階の整理)

区分主な内容本記事との関係
情報提供結果説明・啓発(郵送等)面談型の2区分 より軽い
動機づけ支援計画・動機づけ本記事の 左列
積極的支援継続伴走・180p本記事の 右列

まとめ

  • 動機づけ支援 … 動機と 実行可能な行動計画。3か月後の 計画実施評価 で終了。180pは 原則使わない
  • 積極的支援3か月以上の継続180ポイント(アウトカム+プロセス)。工数・単価とも 大きい
  • 2cm・2kg は積極的支援の 最大アウトカム であり、動機づけ支援の 必達条件ではない
  • 区分は 利用券・XML・手引き で決まり、収益目的の付け替えは不可
  • 次の記事(読み順): 特定保健指導の施設要件(第2章)
  • 運用の詳細は 院内フロー180ポイントの細目

よくある質問

動機づけ支援にも180ポイントは必要ですか?
いいえ。180ポイント制は積極的支援の修了要件です。動機づけ支援は初回面談と3か月後の行動計画実績評価が基本で、ポイント集計方式は原則適用しません。
積極的支援の方が必ず腹囲2cm・体重2kg減らないといけませんか?
2cm・2kg減はアウトカム180ポイントの代表例です。未達でも1cm・1kg減や行動変容とプロセス評価を合わせて180ポイント以上を目指す設計です。いずれにせよ3か月以上の継続支援と実績評価が必要です。
利用券の区分を間違えても内容は同じですか?
同じに見えても制度上は別プログラムです。積極的支援を動機づけとして実施・請求すると返戻・不正請求のリスクがあります。利用券・健診XMLの支援区分を必ず確認してください。
65歳以上は積極的支援になりますか?
原則いいえ。65〜74歳は40〜64歳で積極的支援相当のリスクがあっても動機づけ支援に分類されます(→ 対象の記事を参照)。

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