特定健診 約12分

特定健診は売上の次の一手|充実管理加算・施設評価・保健指導まで院長向けに整理

2026年改定で特定健診の受診有無(LSME001)が充実管理加算の提出必須項目に。実績評価・特定保健指導との接続で、健診を「単発事業」から収益の柱へ変える考え方を院長向けに解説。

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生活習慣病を診ているクリニックにとって、特定健診は 「健診シーズンだけの仕事」 ではなくなりつつあります。

2026年6月の診療報酬改定で、生活習慣病管理料の 充実管理加算 は「データを出す」だけでなく 管理実績の相対評価 に切り替わりました。外来様式1には 特定健診の受診有無 (LSME001) が新設され、脂質異常症・糖尿病の 実績評価指標 にも 特定健康診査(=特定健診)の受診 が明示的に含まれます(後述の出典参照)。

つまり院長が押さえるべきは、健診単価そのものだけでなく 「健診 → データ提出 → 施設の実績評価 → 特定保健指導」 という一本の収益ラインです。

1. 充実管理加算と特定健診の受診有無——健診が「提出必須項目」になった

旧「外来データ提出加算(50点・一律)」は、2026年6月以降 充実管理加算(10〜30点・実績で区分) に改称されました(出典:厚生労働省 令和8年度 外来データ提出加算等に係る説明資料)。

観点2026年5月まで2026年6月以降
名称外来データ提出加算充実管理加算
点数50点(一律)10〜30点(実績で区分)
健診との関係提出項目に健診情報は限定的LSME001が必須(40〜75歳)
評価提出の有無提出+他院との相対実績

特定健診の受診有無の意味

LSME001は、生活習慣病管理料を算定する 40歳以上75歳未満 の患者について、直近6か月以内に特定健診(特定健康診査)を受けたかを記録する項目です(出典:令和8年度 外来医療等調査 FAQ)。

  • 受診月を 0か月目、翌月を 1か月目 と数え、6か月目まで「有(1)」
  • 例:2026年6月受診 → 2026年6〜12月の様式1は「1」、2027年1月以降は「0」
  • 自院・他院を問わず、6か月以内の受診があれば「有」

健診を院内で実施していなくても記載は必要です。ただし 「誰が・いつ・どこで受けたか」 を把握していないと、毎月の様式1作成で取りこぼしが起きます。詳細は 充実管理加算の要点 を参照してください。

2. 「施設評価」とは——健診施設認定とは別の、相対ランキング

「将来的に施設評価の対象になる」という話で混同しやすいのが、次の2つです。

種類何を評価するか特定健診クリニックとの関係
充実管理加算の実績評価届出医療機関全体の中での管理実績順位直接関係。脂質異常症・糖尿病で健診受診割合が指標に入る
優良総合健診施設認定(日本総合健診医学会)人間ドック等の施設基準・精度管理特定健診の「かかりつけ医」型クリニックとは別ルート
外来医療等調査への適切な参加様式1データの正確な提出加算算定の 前提条件(不備が続くと算定停止の可能性)

生活習慣病クリニックが当面意識すべきなのは、充実管理加算の実績評価 です。

実績評価の仕組み(2026年改定)

厚生労働省は、届出医療機関から集めた外来医療等調査データをもとに実績値を算出し、医療機関ごとに通知します。加算1・2は 他院との相対順位 で決まります(出典:厚労省 令和8年度 外来データ提出加算等に係る説明資料)。

加算点数実績の目安
充実管理加算130点届出機関全体の 上位20%
充実管理加算220点届出機関全体の 上位50%
充実管理加算310点データ提出体制が整備されている

特定健診が効く指標(出典つき)

厚生労働省の公式資料では、制度上の名称 「特定健康診査」 が使われます。日常の「特定健診」と同義です(外来様式1の項目名も「特定健診(特定健康診査)」と表記)。

疾患ごとに評価軸が異なります。脂質異常症糖尿病 では、集計期間中の 特定健康診査の受診 が実績指標に 明示的に カウントされます。高血圧症 の指標には含まれません。

主病公式の実績指標(要約)特定健康診査の位置づけ
脂質異常症継続投薬管理患者のうち、脂質異常症に係る検査を実施又は特定健康診査を受診した患者の割合/継続受診割合検査と並列でカウント(どちらかで分子に入る)
糖尿病HbA1c検査を実施又は特定健康診査を受診した患者の割合/眼科・歯科連携加算の算定割合/継続受診割合HbA1c検査と並列でカウント
高血圧症継続受診を行う患者の割合のみ指標に特定健康診査は含まれない

出典(実績評価の指標一覧)

いずれも、脂質異常症について「集計期間中に、脂質異常症に係る検査を実施又は特定健康診査を受診した患者の割合」、糖尿病について「集計期間中に、HbA1cに係る検査を実施又は特定健康診査を受診した患者の割合」と記載されています。

充実管理加算 との関係

読み方:院内で特定健診を受けさせるだけでなく、かかりつけ患者の健診受診状況を把握・記録し、LSME001に正確に反映することが、脂質異常症・糖尿病の実績値改善につながります。加算3(10点)から加算1へ上げるには、実績評価を上げる実践ガイド の運用改善とセットで考えるのが現実的です。

3. 特定保健指導——国が「実施率向上」を課題にしている収益の柱

特定健診の次に続くのが 特定保健指導 です。健診と保健指導はXML・請求先が分かれますが、患者体験と収益の流れは一本 にした方が院長の数字は動きやすくなります。

なぜ「機会損失」になっているか

第4期(2024〜2029年度)の目標は、特定健診実施率70%以上・特定保健指導実施率45%以上 です。一方、令和5年度の全国実績は健診約60%・保健指導約28% と、指導は目標に大きく届いていません(出典:厚生労働省 特定健診等の実施状況)。

保険者側も実施率が低いと後期高齢者支援金の加算・減算に影響するため、健診だけ受けて指導に進まない患者 は、国・保険者・施設のどれにとっても「もったいない」状態が続いています。

クリニックの収益イメージ

契約単価は保険者・地域により異なりますが、目安は次のとおりです。

区分契約単価の目安(税込)備考
特定健診(基本)7,000円前後協会けんぽ兵庫支部の上限単価例(出典:協会けんぽ兵庫
積極的支援2.5〜3.2万円国保入札では2.5万円前後が多い。初回4割・評価6割の分割請求が一般的
動機づけ支援1万円前後初回面談中心

積極的支援は 1件あたり健診数件分に相当する単価 です。健診300件のシーズンで指導対象が60人、うち積極的支援が40人受ければ、指導だけで 百万円規模 の追加収益になり得ます(契約・脱落率により変動)。

院内でつなぐ打ち手

  • 健診当日に初回面談(契約が許せば先行実施)。後日電話では脱落しやすい
  • メタボ判定・階層を健診直後に確定し、3か月後の評価予約 まで取る
  • 健診XMLと保健指導XMLを 別フローにしない保健指導の院内フロー

保健指導シリーズ全体は 特定保健指導の全記事マップ から読めます。

4. そのほか——特定健診が開く売上の可能性

健診を「受けさせる」だけでなく、クリニックの強みに合わせて伸ばせる領域があります。

施策収益の考え方
被扶養者の集患社保本人は健診不可でも家族は特定健診可。窓口説明と予約導線が件数に直結(集患の記事
健診+がん検診同日来院1回で複数収益。券・提出先の整理が必要(同日受診の記事
協会けんぽ「人間ドック健診」(2026年〜)被保険者本人向けの新メニュー。特定健診とは別枠(関連記事
医師会代行の手数料削減代行700円×件数は純コスト。院内電子化で浮いた事務をLSME001・指導に回す(1件のお金の流れ
メタボ・生活習慣病の継続診療健診で発見した患者のかかりつけ化は、保険診療の年間ベース収益につながる

よくある質問

特定健診をしていなくても充実管理加算は算定できますか?
算定自体は可能ですが、2026年6月以降の外来様式1では40〜75歳の対象患者についてLSME001(特定健診の受診有無)の記載が必須です。また脂質異常症・糖尿病の実績評価指標には、集計期間中の「脂質異常症に係る検査または特定健康診査の受診」「HbA1c検査または特定健康診査の受診」が含まれ、届出医療機関全体との相対比較で加算区分が決まります(出典:厚労省「令和8年度 外来データ提出加算等に係る説明資料」)。
施設評価とは何を指しますか?
生活習慣病管理料の充実管理加算では、届出医療機関全体の中での実績値順位(上位20%・50%)が加算1・2の要件です。これは健診施設認定とは別に、外来医療等調査データに基づく医療機関の相対評価を指します。
特定保健指導は健診と別事業ですか?
請求・XMLは健診と分かれますが、院内オペレーションは連続です。健診当日に初回面談を組み込むと、全国平均約27%にとどまる保健指導実施率の改善と、積極的支援1件あたり数万円規模の収益につながりやすくなります。